「史実」って何?

今日の大河をBSでみてしまいました。いつもなら離れに戻ってNHK➕で復習するのですが、今日の話は悲しすぎて他のチャンネルを見ることにします。先週、大河ドラマの築山事件をめぐって多くのYouTuberたちが「史実と違う」と大騒ぎしてました。「史実」ってなんですか。

私は自分で農家の蔵から文書を借りて、解読して返すことを大学時代に実践してます。蔵の中にあった文書の多くは虫が食っています。文書虫といえば、可愛いもんですが、実はダニです。ダニに食われながら解読作業を進めます。一日分が終わると銭湯で身体を洗います。発掘調査もそうです。真夏の炎天下。深い山城の堀の中で土の種類を見分け、遺物が出てくれば測量班が来るまで邪魔にならないようにハケで土を履いていきます。本丸と二の丸を結ぶ土橋の柱穴はオタマて土をしゃくりあげます。多少の雨でしたら、地面に張り付いてさぎょうします。そして、焼けた木材が見つかれば放射線元素の測定に回します.一日の発掘作業が終わると合宿している温泉に入ります。大雨が降って作業が中止になると雨の中、買い物に行きます。測量班の高校生たちにはお土産を買って帰ります。大人のお楽しみの本です。高校生は群がります。卒業論文を教授に見ていただいた時、私は教授から「現地に行ったか」とだけ確認されました。

世の中の歴史系YouTuberさん現場を歩いてますか?原文書を読んでますか?何かの本で読んだだけ、Wikipediaで見ただけ。アニメて見ただけ…。

専門書もしっかり読んでみましょう.どこの先生がどのような意見を出しているか確認してますか。

私はかつて高校時代、新任の日本史の先生を振り回しました。天狗になりました。だから軽音に走る余裕がありました。しかし、大学1年の終わり、講師の先生に呼び出されました。「お前の歴史は講談だ」と言われ、原文書を目の前に何もできませんでした。そこから頑張りました。しかし、足で学んだ歴史はそれまでの私とは違ったものになりました。どんな名前だけ難しい大学を出たとしても、負けない自負を持って授業に臨みました。実際に横浜市中学校社会科研究会の1泊2日の夏期巡検の講師を3回やっています。二日間、現地のガイドもともかく、現場まで向かうバスの中から見えるものはすべて説明できるように下見を重ねて準備しました。おかげで、中央高速の車窓に見える山はすべて名前を指摘できます。先輩の先生の中には山を見ただけで、山の植物を指摘し、地質を指摘します。こういうのが実際に授業に活かしてくるのです。

だから、教科書会社の依頼で教科書検定前の白表紙本の校正や先生方が実際に教科書を使う時、本文のこの部分はこんな意味。図版のこの部分はこういう意味。写真も解説する授業書というものがあります。この授業書の執筆陣にいました。どれだけの文献や史料にあたっていたかわかりますか。だから蔵書が一万冊を超え、それを読みこなさなければいけないし、新しい解釈などテレビ番組で確認しました。山のようなBlu-rayが録画されています。

 

だから、自分の思い込みだけで発言してしまう歴史系YouTuberはまったく参考に相手にしてません。きみたちがどれだけ参考書を読んだって、もっともっと歴史の世界は深いのです。簡単に「史実」を振り回すことはしたくないと思います。