シングルスの孤独

私はあまりシングルスの指導は上手ではなかったと思います。しかし、末吉では中側のシングルスと心中と決めてました。中側もあのオーダーが出された時、覚悟を決めたと思います。だから準決勝で東鴨居戦。普段通り戦えば勝てないと思っていたと思います。体格、経験を見れば勝ち目はありません。ただひたすら集中して戦うしかなかったと思います。

 

浜中では立田から始まって真澄、明子。

決して上手なシングルスは育てられませんでした。ひたすら「打て!打て!」でした。今でもママさんバドミントンの世界でドロップを打てばすむ場面で私の「打て!」の声が聞こえてくると言ってました。

そして、この3人に要求したのはスピードでです。3人とも遠くから見てもわかる速さでした。

しかし、その土台は足です。苦労したのは真澄です。フットワークしていて、仰向けにびっくりかえってしまいます。決していい加減な気持ちでそんなことになっていることはわかってます。

立田はまだ上の試合での経験が不足してました。そういう意味で何度も私からこずかれてました。そして、立田の場合はチームがいない。一人で戦わなければいけない。辛かったと思います。もしも、一つダブルスやがあればたぶん違う選手生活ができたと思います。

明子には千恵がいました。明子と千恵には力の差がありました。それでも冬の区大会で明子が腰痛で岡村中に不覚を取った時、決勝で千恵が勝ってくれたおかげで明子のその後の戦いにつながりました。夏の大会の決勝。相手は明子に勝つことをぜんていとしたオーダーでした。しなし、粘りを続け、相手の隙が出てきたところから攻勢に転じます。ファイナルは明子のペースで進み勝利します。。しかし、千恵というスパーリングパートナーの存在があったこのは明子にとって大きかったと思います。

千恵を一度でも県大会のコートに立たせてあげたかった。

そして明子が勝ち上がっていた。準決勝。御幸中のシングルスとの戦い。御幸中のシングルスとまともにあっていたらかてなかった。しかし、結果は明子の勝利だった。しかし、明暗をわけた。明子の急成長が間に合った。

しかし、県大会の大清水戦では私もコートサイドに立たないまま敗れてしまった。翌日個人戦でまた、同じ相手と当たることになっていた。相手の選手はジュニア出身です。どんなに早く動いてもシャトルが嫌なところに返ってしまいます。ただ一つ欠点?手足が長いことでした。そこでこちらからスマッシュを打つことをあえて封じました。ドロップを打たれるたび相手は前に入ります。その次に高いクリアで後ろを狙います。根気のいる作業ですが、相手は前日と全く違う戦い方にペースが狂っていきます。これは現在でも山口茜がインドの長身シングルスのシン・ドゥを相手に長いラリーを続けながら、シン・ドゥの返球が甘くなった瞬間を見逃さずに攻めていることにつながります。ただ山口茜がすごいのはジャンプしている中で相手の位置を見て必要なショットが打てることなのです。

奥原希望も身長の小さい部分を世界一のフットワークで補っていました。スマッシュも大した威力はありません。前に詰める速さが違うのです。

女子選手をあずかっていてどうしても避けられないことがあります。明子の県大会準決勝の対戦相手がまさに自分の思い通りに出来ない試合でした。ただ明子との試合で苦しい部分がすべて出てしまい3位決定戦ではいつもの自分にもどって関東大会へ出られました。

男性の顧問にそういうことを気づかれてしまっていることは女性として辛いと思います。しかも関東大会を賭けた試合。本当に辛かったんだろうな。と思います。本人の口から言えることではないですから。

例え練習試合であっても顧問は気がついています。本人を傷つけない配慮が必要でした。

正直女子選手を預かるだけでもそれだけの配慮がありました。

 

航太が一年生の冬、見付台体育館でのオープン戦の決勝で相手は小学生時代に全国大会に出ている選手でした。まともには戦えないのはわかってました。

だから航太に言ったことは相手側がシャトル交換を要求してきた時、拒否しろということでした。常に綺麗なシャトルで練習している選手にとって羽が折れて不規則に飛んでしまうシャトルを使い続けさせることでペースを乱させることでした。そうすると相手もムキになって自分もシャトル交換を拒否し始めてしまいました。術中にハマってしまったのです。航太は勝てませんでしたが、相手の監督にとって中学校から始めた選手にこうして追い詰められたことはショックだったようです。

 

2年のの冬。やはり見付台体育館で行われたオープン戦はダブルスもシングルスもエントリーてきました。試合の運営をされている平塚協会の荒井先生がシングルスで浜中の由佳は辻野。純子は大西に当たるようなトーナメントにしてくれました。そして、純子と大西の試合。ダブルスなら辻野が助けてくれるのに一人でなんとかしなければいけません。純子もシングルスは苦手とか言いながら大西にくらいついてました。大西は必死に自分の気持ちを整えるためコートの中を何度も何度もウロウロして、口で何かを口ずさんでいました。

私は大西は崩せると確信しました。いかに辻野をはずし、大西にシャトルを、集めるかが、勝負になると思ってました。ただそれは団体戦では教えませんでした。個人戦の決勝まで見せてはいけない。と考えていました。