試合の流れ

末吉が県大会準優勝することは誰も予想していなかったことでした。客観的に見れば、どう考えてもあのチーム編成で勝ち上がることは難しいと思います。ただ4月以降の強化練習会を耐えにたえました。彼女らは前任の菅野先生からこうすれば勝てるということを学んでいます。しかし、その前提は旭区でNo.1の岩切を公式戦ではなかったのでメンバーに入れることによってさまざまなパターンのオーダーが組めたからです。末吉だけのメンバーでは県大会へ出場するのがやっとてあることを私は承知していました。しかし.校長命令は県大会優勝です。

中側の姉がコーチに来てくれました。それでもなんとかなる話ではありませんでした。強化練習会はいつも大切なところで負けて、2部止まりです。

生徒は私になんでオーダーを変えてくれないんだ。とくってかかりました。それでも私は動かず、学校では基本練習の繰り返し、休日は大道中でパターン練習を繰り返していました。

厚木総合体育館で川崎1位の中野島中と当たるまでずっと我慢し続けたオーダーで戦うことができました。生徒たちもここが勝負だと覚悟していました。そして、勝ち上がるたびに相手の顧問が疑心暗鬼に陥って勝手に崩れていきました。

 

私が一緒に戦ってくれたダブルスで最強なのは間違いなく純子と由佳です。しかし、個人戦しか関東、全国への望みがない状況下でした。純子も由佳も大清水の辻野、大西しかない意識だったでしょう。横浜市大会の決勝もその通過点に過ぎない意識だったかもしれませんね。しかし、夏の大会の怖さは私は何度も経験してました。一瞬でも隙があると大変なことが起きる。実際に私は末吉でそれをやってみてたし、日吉台でも平木先生率いる六角橋中が日吉台の、第一ダブルスを警戒し過ぎてせっかく横浜No.1のシングルスを持ちながら、オーダーを入れ替えてしまった。選手の気持ちはどうだったと思いますか。

そういう意味で横浜市大会決勝に勝ち上がった本牧中。あの子たちは一年生の時、浜中と一緒に全国大会の得点係をしていたことを覚えてましたか。南が丘の、ダブルスに勝って波に乗ってます。特に奥野を乗せてしまうと万が一を起こす力があったのです。そして、純子も由佳もそれまでの戦いで出足はどうでしたか?余裕ありませんでしたか?

あの試合の流れ。試合開始直後、次々と本牧が得点をあげてその度に奥野が雄叫びをあげていました。そこに、純子も由佳もその流れに気がついていましたか?少なくとも私はまずい!と感じました。すぐに審判にゲームを止めさせ、本牧の雄叫びはいいのですか、と質問しました。奥野たちに聞こえるように…。もちろんこういう監督の行為は実はルール違反です。そんなこと承知です。プロ野球でバッターが間を嫌う場面があります。私の狙いはその間でした。もちろんこんなことすれば金沢中の後藤先生、野庭中の田中光顕先生、善行の先生には通用する方法ではありません。たまたま相手校の蝋山先生は私の後輩です。私も口を出させないぞと睨んでいました。一息ついた純子と由佳は仕切り直しできました。そこからは純子と由佳の独壇場でした。栗田谷中の岸先生が浜中のあの足には勝てない。と言ってました。覚えてますか?明子が関東大会で負けて帰ってきた次の日。体育館でどんな練習をしたか覚えてますか。ノックではないですよ。延々と続くフットワーク練習でした。その声と足音にカーテンの向こうで練習していた演劇部がグラウンドに避難しました。そこから始まっているのです。その仕上げの試合だったのです。本牧中を粉砕できなければ大清水まで届かないのです。一点でも隙を見せられない試合が続いて行くのです。私も純子、由佳もその目標は一致していたと思います。ただ私も中体連の立場上、決勝まではコートサイドに行かれません。私にでわかることはそこまで二人を信じ続けるしかありませんでした。申し訳ない。大切な試合に他の顧問のようにコートサイドに立たなかったこと。直接試合の流れを感じていればアドバイスの出しようもあったと思います。いつも大切な試合にコートサイドに立てる顧問が羨ましかったです。だから練習時間に緊張が解けなかったわけです。すごいストレスでした。辛かったてす。顧問として直接流れをみられない。

好美の時は逐次千恵が試合経過の報告してくれてはいましたが、本部から離れられず、1年間を賭けた団体戦もすでに明子のシングルスが負け、華よとグッサンがそれでもファイナルに持ち込んでました。平木先生がそばに来てファイナルのアドバイスをどうするのか尋ねましたが、私が言えたのはいつも練習しているようにやりなさい。としか言いようがありませんでした。

早く中体連の役員を誰かにバトンタッチしたかったです。

だから、退職する年やっと役員を離れました。スタンドから試合を見ている時、自分の大切な選手が一生懸命に試合してる後ろの監督席で文庫本を読んでる顧問を見てものすごく腹が立ちました。なぜ一緒に戦ってあげないんだ。